お知らせ

2014 全日本選手権報告

 『1年の時を経て、戻ってくることの出来たこの決勝戦の舞台でしたが…あと1歩届きませんでした。』

賞賛

東京神戸両選手の讃え合う様子と表情が、直前まで繰り広げられた激戦を想起させる。

我が東京ブルーサンダースは、11月15・16日に兵庫県立但馬ドームで実施された「第16回全日本身体障害者野球選手権大会」に関東甲信越連盟代表として出場しました。決勝戦進出を果たしましたが、神戸コスモスにサヨナラで敗れ、悲願の日本一を達成することは出来ませんでしたが、2年連続の準優勝というチーム史上初の成績を挙げることが出来ました。皆さまからの今シーズンのご支援ご声援に対しまして、深く感謝申し上げます。以下、出場報告いたします。

 

中一週での但馬ドーム

 

「どうも!先日の世界大会はお疲れさまでした。大変なゲームばかりで…」

「いやあ!最後のアメリカのピッチャーの球(たま) めちゃくちゃ速かったですよ〜!!」

今回但馬ドームで一番最初に出会ったのは、北九州フューチャーズのキャッチャー岩男選手。黒塚選手や神戸コスモスの西原選手・鳴滝選手・宮上選手・吉田選手、広島アローズの渡辺選手・川本選手…顔を合わせた代表選手と次々にご挨拶のお声掛けをしているうちに

「あっ、お疲れさまです〜!」

いつものようにテキパキと実務にあたるブルサンのマネージャー・開田と言葉を交わし、その時

「ちょっと前に同じとこの同じような場所で同じような場面があったな…」とか考えてしまいました。それぞれの立場で世界大会を視察しておりましたが、今シーズンは世界大会と全日本選手権が中一週で続く日程。東京周辺はその中の週が雨にたたられたため練習がやむなく中止となり、他のチームの選手だけではなく東京ブルサンのメンバーとも、『但馬で会ってから但馬で再開!』という、フシギな状態となりました。

出陣

長田新監督(後方左)とともに、新生ブルサン但馬でスタート。

我がブルーサンダースからの日本代表メンバー・田中山﨑もそうでしたが、両選手とも、共に戦った代表メンバーと旧交を温めている様子が見られました。あの緊張感からわずか2週間での代表選手同士の穏やかな様子が“世界大会のエピローグ(結末)”の趣を感じさせました。市内の保育園児の皆さんの心温まる音楽劇上演もあってか、世界大会の開会式と比べると穏やかな様子で進んだ選手権の開会式でしたが、終了すると一変!但馬ドームが風雲急を告げます…開幕戦・春の全国大会王者北九州フューチャーズが、この秋の選手権に賭けてきた名古屋ビクトリーにリードを許し、敗れる展開が起こったのでした。この後の大激戦を予感させました。

 

スコアに表れない大接戦

 

「初戦から全力で行こう!」

開幕戦の展開を背にしてのアップゾーンでのミーティングで意思統一したブルサン。しかし、“但馬の魔物”はそうはさせてくれず、ブルサンも激戦に巻き込まれてしまいました。相手は最近では対戦の多い広島アローズですが、こちらの先発香野に対し「臨むところ!」とばかりに向かってこられました。初回裏、アローズの先発でもある城選手にレフト線を破られ、そのままホームランを許してベンチに不穏な流れが伝わると、打線も連鎖したかの様に、下位打線が作ったチャンスがつながりません…そして城選手の2打席目、今度はセンターに運ばれ2打席連続HRでアローズが逆転。「香野さんを目標に練習して、代表を目指せるようになりたい。」かつてのチームメイトに進化を見せつけた城選手でした。逆に苦しくなったブルサンを救ったのは、やっぱりこのふたり。劣勢のチームを盛り上げたのは“ショート田中”ピンチが続く状況でも、飛び出した相手ランナーを刺すクールな判断と、マウンドのピッチャーを守るという、ピッチャーだからこそ感じる熱い気持ち。そのリズムに乗って、リードを許した直後の4回表に右中間へ同点に追い付くHRを放ちました。

両エース

力投の香野と、その香野を攻守そして心で盛り立てたショート田中。

そして、相棒役の山﨑にも出ました!止まらずにつないだ下位打線を還す左中間を抜く逆転3ラン。財原・高橋の9、10番打者による巧いヒットも、この2発を誘発したと言えるでしょう。この回に大量リードこそ奪えましたが、最終5回裏にまた無死満塁のピンチを背負い、最後まで苦しみながらも逃げ切り、今大会の、そして長田新監督の公式戦の初戦を勝利で飾りました。

いぶし銀「

ブルサン打線を乗せ、爆発を呼んだのは財原(4)と高橋(17)の渋いヒット。

翌日の準決勝の相手は福島アクロス。“但馬の魔物”を味方につけて、初戦は7点差を逆転して勝ち残ってきました。前日は鳴りを潜めていた日暮や香野のバットから快音が響いて3回表まで7点をリードしましたが、ここからアクロスの驚異の攻撃が始まったのでした。先発田中の制球のズレを見逃さず、フォアボールを選び、野手の間に落とす巧打を連発。目の前の相手は、かつて、ブルサンを徹底的に苦しめたあの福島アクロスの姿でした。被災の苦しみから立ち上がり、但馬ドームに戻ってきた強いアクロス。リードもわずかに1点と迫られましたが、5回に田中が自ら意地のタイムリーを放ち、9-6と突き放して勝利しました。

ヤマ

山﨑の打球は、いつか但馬のフェンスを越える。

ただ、ベンチは田中の状態を心配します。当の本人は「どうもすみません。この際決勝までに作り直しますね!」と気丈に明るく語ってくれましたが…そして、ヒットは出るものの、タイミングのズレに悩む様子の山﨑へ

「ヤマ!あれこれ考えずに思いっきり振ってこいよ!一番若いんだから。」

「ヤマ!一番若いんだから今いっぱい考えて悩めよ。」

と、心優しき先輩選手たちがあべこべなメッセージで激励!?する中、若きホープはどんな答えを出すのでしょうか?

 

今シーズンの集大成 結実の決勝戦

 

「絶対イケル!打てますから!」

神戸コスモスとの、昨シーズンから続く2年連続の選手権決勝戦の先頭打者としての打席で打ち取られた山﨑でしたが、吹っ切れたのか?或いは何かを掴んだのか?自信を持ってベンチに帰ってきました。臆することなく立ち向かう姿勢、前回の決勝戦の状態のまま引き下がるわけにはもちろんいきませんが、「全日本は初舞台」の山﨑が、新たな空気を持ち込む予感がしました。しかし、歴戦の王者神戸コスモスは、早速決勝戦の主導権を奪いにきました。初回裏、田畑選手が右中間を深々と破るホームランを放ち、2点を先制しました。

インターバル

決勝戦はディフェンス勝負?臨むところ!

「チッキショー…」

自身の横への打球を破られた日暮が悔しげな表情でベンチに戻ってきましたが、ここまでは前回の決勝戦に似た展開。ここから成果を見せつける時です。日暮同様の悔しさはみんな抱いたはず。しかし、『ハートは熱く思考はクールに』を、まずは攻撃で実践したブルサン。すぐ次の2回表先頭の5番宮本が、神戸先発の佐々木投手の難しい球を上から巧く叩いてセンターへ運びチャンスメイク。その後1死1・2塁から、藤沢が高めに入ったボールを逃さずに右中間へと運び1点を返します。状況に応じた打撃の宮本、初戦から決勝へ状態を上げてきた藤沢。両者さすがのバッティングでした。

センターライン

センターラインを固めて挑む。

1点差のままゲームを運んだブルサンは3回の守備でも、ライト香野がヒットでセカンドを狙ったランナーを山﨑への中継で落ち着いて刺し、センター日暮が背後への打球に追い付き、外野守備からもゲームの流れを呼び込みました。内外野一体となってどの状況でも常に牽制し、コスモスの抜け目ない進塁に対応する姿勢も見せました。田中のピッチングからリズムを作ることが多い戦いぶりですが、この試合に関しては攻守でマウンドの田中を乗せていけたと言えるでしょう。4回5回と再三得点圏を含む複数のランナーを背負いながら、完全にエンジン全開の田中が空振り三振を奪い、打球を詰まらせました。配球・守備陣への指示・要所でのタイム、これらを含めてのキャッチャー大森のリードぶりも、白熱の決勝戦を演出しました。

リード

大会史にも残るであろうこの決勝戦を演出した、キャッチャー大森の好リード。

「練習してきたことを全部出そう!」

「ヤマ!大会最後の打席だ。振り切ってこい!」

ベンチの意思や、山﨑へのゲキが完全に一致した最終回7回表の攻撃。初回の自分の言葉をまさに実践する一撃を放ちました。レフト後方へ打球は一直線。ドーム最深部外壁を目前にして打球は失速しましたが、但馬ドームのフェンスオーバーを匂わせる驚異の当たりで2塁へ。続く石垣は得意の足を活かした当たり、間一髪アウトも山﨑を3塁へ進め、ここで香野。練習してきたこととは何?バッター香野とランナー山﨑が示してくれました。林前監督から長田新監督に引き継がれても、変わらずに徹底的に練習した「進塁打と走塁」打球処理したコスモスのファーストは、ホームに目をやった後、そのまま1塁ベースを踏みました。見栄えはしなくても、コスモスから全員でもぎ取った、結実の1点。山﨑・石垣・香野・すべてのブルサンメンバーが、心の底からの雄叫びを上げました。

常笑

常笑が上昇を招き、常勝への礎となる。

そして裏の守備。不運な当たりからの出塁を許した1死満塁の場面。監督コーチマネージャー、気が気でないベンチは指示を出し、声援を送りますが、その声は止みました。ベンチにも聞こえる、マウンド周辺の選手達の声、笑い声まで聞こえます。今は全日本の決勝戦・一打サヨナラのピンチ…でも、大丈夫だ!ベンチが確信した瞬間、マウンド周辺の円陣から

 

『せぇーのっ“JUMP!”』

 

高く跳び、円陣から散った選手達。東京ブルーサンダースが、新たな領域に足を踏み入れたと感じさせられたシーンでした。

ゆうしょう

表彰式直後、西原主将を先頭にコスモスメンバーがブルサンへ歩み寄り、両チーム全選手で健闘を讃え合う光景が長く続いた。

コスモス・吉田選手の打球が、無情にもサード石垣の足もとで跳ね、1塁ベンチから選手達が飛び出してきました。その瞬間を各ポジション・3塁ベンチから見届けたブルサン。去年の決勝で知った課題、今年の決勝で手にした新たな実感と戦い方、そして来たるべき来年の決勝では、自分たちが勝利、日本一を掴む。その道のりは既に始まっています。

 

記:山形重人

 

試合結果戦績

1日目 2014年11月15日 1回戦  ○  11-4  広島アローズ

2日目 2014年11月16日 準決勝 ○     9-6  福島アクロス

                    決勝戦 ●    2-3x 神戸コスモス 

ノーサイド2

身体障害者野球の歴史に残るゲームを、まだまだ創っていきたい。

大会全体の結果(日本身体障害者野球連盟 秋の選手権のページ)