旧コラム

第20回春の全国大会 結果報告

身体障害者野球を象徴する最大規模の大会、日本一美しいスタジアムと評されることも多いオリックス球団のホームスタジアム・現在の名称ほっともっとフィールド神戸を中心に開催される『全国身体障害者野球大会』も、今回は第20回の記念大会です。東日本大震災の被災から懸命に立ち上がる「福島アクロス」もこの大会に復活出場を果たし、全国16チームが5月19日・20日の2日間に渡って戦いを繰り広げました。



20回目の“記念すべき”入場行進にブルーサンダース登場!

20回目の“記念すべき”入場行進にブルーサンダース登場!

 


攻走守躍動の新監督初戦

我が東京ブルーサンダースも、前回の大会初戦で岡山桃太郎との熱戦に敗れた悔しさを胸に、林新監督を迎えて気持ちを新たに雪辱を期しました。今大会の初戦の相手は、、神戸コスモスと共に身体障害者野球の創設期を支えた古豪・大阪ジャガーズ。大阪府出身の新監督にとって、何か運命的な相手との初戦となったのではないでしょうか?一方、選手達の方は開会式からリラックスムード。時折笑顔も交えてノビノビと行進を終え、試合直前の練習ではキャプテン石垣の発案で“ダッシュの掛け声を変えてみよう!”となり、そのノリに乗って結果的には普段より多めにダッシュ等のアップをこなして試合に挑みました。さてさて、これがどう出るか…?



キャプテン石垣(10)以下入念なアップで準備完了のブルサンナイン

キャプテン石垣(10)以下入念なアップで準備完了のブルサンナイン

 


その結果は「吉」だったようです!多めのダッシュで身体にキレが出たのか?藤澤の長打など各選手振りの鋭い打撃で初回から得点を重ねました。今回は出場登録メンバーも少なく、スタメンの選手が代走者としても力走しましたが、打撃が好調な場合は当然走塁・走ることも多くなり…。入念なダッシュの反動から“足がもつれる”状態の選手も出てきましたが、歳を重ねる各選手が『フィールドでの自分自身との闘い』にも克って!?リードを拡げました。



東京大阪決戦の息詰まる攻防

東京大阪決戦の息詰まる攻防

 


3回までに7点をリードしましたが4回に相手の反撃に遭って2点を失い、なおも1死満塁のピンチ。相手に傾いた流れでしたが、打撃と走塁で得たリズムが守備でも好影響をもたらしたのか、先発大森の顔面付近を襲うライナーをその大森が素早い反応でキャッチ!サードのキャプテン石垣が送球をガッチリ掴んでダブルプレーに抑え、相手の流れを断ち切りました。普段から自身の身体と障害に向き合う大森を知る立場として、このダブルプレーのシーンは、感動的なチームプレーのシーンに見えました。その次の攻撃で逆にこちらが2点を加え、裏の守備ではこの回から大森の後を受けた、全国大会初登板の河井が0点に抑えて、5回コールドで林監督の初戦を勝利で飾ることが出来ました。そして、前回大会で神戸コスモスを破って春の大会初優勝した北九州フューチャーズへの挑戦権を得ました。



勝利の立役者!ピッチング・フィールディング抜群の大森

勝利の立役者!ピッチング・フィールディング抜群の大森

 


チーム力が試される決戦

翌日の大会2日目、ほっともっとフィールドで勢いに乗ってディフェンディングチャンピオンと対戦!否が応でもテンションが上がるはずなのですが、試合前のベンチは少し落ち着かない雰囲気…直前に選手が怪我をしたようでした。「全員でカバーしよう!」と、改めて意識を高めて挑みました。先発の田中が、立ち上がりの失点を最少の1点にとどめて試合を作り、味方の反撃を待ちました。すると4回、打撃好調の小峰・大森のヒットで同点に追いつきました!相手は昨年の優勝の原動力で、全日本チームのエースにまで上り詰めた黒塚投手。過去に2度、完封勝利を許していたこともあり、足掛け数年で初めて黒塚投手から点を奪ったことで、石垣など当時を知る選手を中心にベンチは大きく盛り上がりました。



ほっともっとの、そして北九州戦初マウンドの田中は今回も好投!

ほっともっとの、そして北九州戦初マウンドの田中は今回も好投!

 


守り抜いて、フィールドベンチ全員で反撃

守り抜いて、フィールドベンチ全員で反撃

 


しかし、春と秋の全国大会の決勝の舞台で何度も神戸コスモスと激闘を演じ、日本代表にも多くの選手を輩出している北九州。経験値があるだけに、試合の状況を切り開く力が勝りました。同点に追いついた後の5回、全日本の主力でもある磯部選手・黒塚選手に、技術と力を兼ね備えた連続長打を浴び、勝ち越しを許しました。ブルサンも6回、田中が失点を取り返すタイムリー、藤澤の果敢な走塁などチーム全員で追い上げましたが、最後は黒塚投手や、北九州守備陣の術中にはまってしまいました。試合の状況や展開に応じた攻撃守備の差が、最終的な点差として表れた感がありました。7回を戦い抜きましたが2-5で敗れました。逆にこの勝利で勢いづいた北九州フューチャーズは、準決勝は群馬アトム、そして決勝戦では前回大会の再現となりましたが、今大会も神戸コスモスを破って、大会連覇を達成しました。



ほっともっとフィールドのコーチスボックスに立つ林監督

ほっともっとフィールドのコーチスボックスに立つ林監督

 


≪林監督 大会を振り返って≫

「以前のように上位のチームに対して、歯が立たずに圧倒されたわけではなく、ジャパンカップの神戸戦や今回の北九州戦のように、上位チームと戦うイメージは持つことは出来た。ただ、少しの差に見えるこの差が、実はとても大きくて少々の練習では差が縮まらないということは理解している。具体的には、例えばひとつ挙げると勝つことに対する執着心に、まだ上位チームと差があるのではないかと思う。初戦はドキドキしたし、勝利できて嬉しくて、2戦目は悔しかった。その気持ちは選手達と同じで、(新監督だからということでの立場の)違いや差はない。」



一杯!北九州の強打者と捕手小峰の一球の駆け引き

一杯!北九州の強打者と捕手小峰の一球の駆け引き

 


試合前や試合中に怪我をした選手も出た中で、チームはよく戦いました。ただ、今大会で見えた選手個々の、そしてチームとしての課題を追及して6月の練習に取り組み、7月には3連覇を達成すべく、静岡県で開催されるドリームカップ大会に臨みます。

最後に、この大会でのブルーサンダースに、遠方よりご支援ご声援頂いた方々に対して、厚く御礼申し上げます。そして、この盛大な大会を20回にも渡って継続して開催してこられた、日本身体障害者野球連盟、及び大会主催団体、後援・協賛・支援団体、そして各関係者の方々に、深く敬意を表させて頂きます。

記:山形重人



一層のレベルアップを誓う

一層のレベルアップを誓う

 


試合結果成績

1日目 5/19 1回戦   ○9-2 大阪ジャガーズ

2日目 5/20 準々決勝 ●2-5 北九州フューチャーズ